「おれも育休をとりたかった〜!」
と答えた男性が30%いるにもかかわらず、実際に育休をとったのはわずか5.14%程度です。(平性29年度の調査)
国の目標は2020年までに13%ですが、厳しそうです。
男性の育休取得はなぜ進まないんでしょうか??
その理由は、内閣府の調査では
- 職場の雰囲気
- 出世や降格への不安
- 金銭的な不安
となっていますが、実態は違います。
男が育休を取れない本当の理由は、
「男が育休をとるのは”直感的に”間違っているから」です。
その理由を説明していきます。
〜参考図書〜
今回はこちらの本を参考にしました。
「人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている
/ふろむだ」
認知心理学をちょーーーわかりやすく解説したものです。
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今5章まではコチラから無料で読めるので、ぜひ読んでみてください。
めちゃくちゃおもしろいです。
「男が育休を取るのは直感的に間違いだ」と思わせていた犯人とは?
人間は様々な認知バイアス(認知のゆがみ、錯覚)を受けながら、直感で答えを出すようにできています。
認知バイアスには以下のようなものがあります。
- 利用可能性ヒューリスティック
- デフォルト値バイアス
これらの認知バイアスが人々に「育休をとらない」という判断をさせていたのです。
見たことない言葉で難しそうですが、言葉は覚えなくて大丈夫です。
1つずつ見てみましょう。
利用可能性ヒューリスティック
利用可能ヒューリスティックとは、見えない情報を無視して判断を急いでしまう認知バイアスです。
利用可能性ヒューリスティックとは脳がすぐに利用できる情報だけを使って答えを出すことだ。
もっとわかりやすく言うと、「思い浮かびやすい」情報だけ使って、答えを出す認知バイアスのことだ。
「すぐに思い浮かばない」情報は、無視して判断を行ってしまう。
判断に必要な情報が欠落していることに気が付かないという点が、非常に危険。
男の育休に関する知識や情報が少なすぎるため、人は、男は育休をとることは間違いだと直感的に判断しています。
世の中には、男の育休に関する情報が全然ありません。
法律や数人の体験談はネットから知ることが出来ても、我々が一番知りたいのは「リアルな声」です。
もし同じ会社に育休経験者がいたら、1番参考になるでしょうが、そんな人はいません。
今ネット上で育休取得を公表している男性たちは「その会社で育休を取る男性社員、第1号」であることが多いです。
みなさんファーストペンギンです。
(すごい!)
僕達が知っている情報といえば、以下のようなものです。
- 育休を取った男性は自分の会社にはいない
- 男は外で働き、女は家事、育児を担当するという日本に根付く価値観
- 上司に妊娠を報告すると、第2声には「子供のためにも、もっと仕事がんばらないとな!」という上司のセリフ(昔のドラマでよく見たシーン)
人はこの情報を元に、直感で「育休はとらない方が正しいな」と判断しているのです。
しかも、人は認知バイアスがかかっていることに気がつくことができません。
一方、調べたり、実際に育休をとった人から聞かないと知ることが出来ない情報は以下のようなものです。
- 法律上、男も育休がとれる
- 育児休業給付金がたくさんもらえる
- 夫婦で育休をとると、どちらにも育児休業給付金がもらえる
- ストレスが減り、お金を使わなくなる
- 結果、お金が貯まる
- 旅行に行ける
- 1ヶ月間以上、里帰りできる
- 別に上司や同僚から嫌われたりしない
- 別に降格させられたり、嫌がらせを受けたりしない
- 仕事にちゃんと復帰できる
- 自由な時間ができる
- 家族とゆっくり過ごせる
- ストレスから開放され、健康になれる
- 妻がたいそう喜ぶ
- 「子供の味方は妻の味方」とわかる
- 子供のことが好きになる
- 子供から好かれる
- 「子供の成長を見守るってこういうことだったのか!」とわかる
- たっぷり読書ができる
- 毎日昼寝ができる
- 筋トレ時間が確保できる
- 筋トレに重要な睡眠の確保や食事の管理もでき、トレーニング効果が上がる
実際はプラスの情報とマイナスの情報、両方を天秤にかけて判断する必要があります。
ですが、人の脳は過剰に結論を急ぐ習性があります。
なので粘り強く考えることなく、今ある情報だけで結論を出してしまうのです。
その結果、育休はとらないという判断をします。
これが利用可能性ヒューリスティックです。
次に、もう一つの方の認知バイアスを見てみましょう。
デフォルト値バイアス
デフォルト値バイアスとは、無意識のうちに「変化しないこと」を選んでしまうことです。
人間は、判断が困難なとき、自分で思考するのを放棄して、無意識のうちに、デフォルト値を選んでしまうことが多いのだ。
しかも、やっかいなことに、選択が、デフォルト値に大きな影響を受けていても、多くの人は、そのことに気が付かない。
現状維持と、それ以外の選択肢では、どちらがいいか、単に直感で判断すると、直感的には、現状維持のほうがいいと錯覚してしまうからだ。
認知バイアスが絡んでいるときは、直感は当てにならないとだ。
今の日本の世の中では、男は育休を取らないのが「普通」です。
上の世代はもちろんのこと、同世代や下の世代でも育休をとった男なんて見たことない人がほとんどです。
だって2017年の時点で5.14%しかいませんし、20日以上取った人はより希少で、2011年のデータでは0.4%しかいません。
LGBTの方が7.6%いるので、それよりもっと少ないです。
育休を取ろうと思うと、自ら動かないといけません。
「育休はとるの?」
なんて親切に聞いてくれる会社や上司は皆無です。
つまり、ほとんどの人にとっては「男は育休をとらない」という選択がデフォルトです。
何もしなければ、そのまま休まず仕事を続けることになるので。
情報が少なく予想がつかないため、育休を取るかどうかの判断はとても難しいです。
多くの人は深く考えることを放棄し、「直感で」デフォルトを選択しているのです。
自分でも気がつかないうちに。
これがデフォルト値バイアスです。
次に、「直感」の信憑性を見ていきます。
間違いだらけの直感
この本によると、人間は客観的事実より、自分の直感の方を信じる生き物だそうです。
ですが、直感は上に紹介したもの以外にも様々な認知バイアスがかかっていて、色々な間違いをおこします。
判断が難しいとき、人間は考えるのを放棄して、直感に従ってしまう。しかし、判断が難しいときこそ、直感はアテにならない。なぜなら、判断が難しいときに直感が出す答えは、思考の錯覚に汚染されていることが多いからだ。
更に困ったことに、人はこれに対処できません。
認知バイアスへの対処法を理解していたとしても、「直感的に正しいと感じること」が正しいとしか、思えないからです。
直感に従って生きていくのは、気持ちいいですからね。
直感に従って生きている人を「かっこいい」と思う風潮もあります。
逆に「直感的に間違っていると思う正しいこと」を行うには、多大なエネルギーがいります。
直感を信じるのは程々にした方がよさそうです。
まとめ
- 人はすぐに思い浮かぶ情報から直感で物事を判断するが、実際は偏った情報しか持っていない(利用可能性ヒューリスティック)
- 人は判断に迷ったとき、直感でデフォルトを選択する(デフォルト値バイアス)
- 直感は様々な認知バイアスに汚染されていて、アテにならない
以上の点より、男が育休をとらないのは、「男が育休を取ることは間違っている」と「直感的に」判断するからです。
なのでほとんどの人は、育休を取らずに、このまま今の仕事を続けるのが「直感的に正しい」と思うのです。
対処法は以下の通りです。
- 粘り強く冷静に考える
- 粘り強く情報を多く集める
- 自分の判断は認知バイアスがかかっていないか、慎重に冷静に判断する
それでは、快適な育休ライフを。